商店街



中津吉吾どん  県北に伝わる民話
  
  
吉吾は中津の商家の出で野津町の吉四六さんと同じような話が伝えられています

アワビ買い

昔、中津の町に吉吾どんというて、なかなかとんちにたけている人がおったげな。
ある日のことじや。 吉吾どんが、魚の辻にさかなを買いにいったそうじや。でも、どのさかなもたかくて買うことができそうにない。

じっとかんがえこんどった吉吾どんは、やがてひとりうなずいて、アワビ貝を三つ六文で買うたそうな。それからさかな屋さんに、「ちょっと火ばしをかしちょくれ。」といって、かりた火ばしでアワビの身をだすと、貝がらだけをだいじそうにもってかえったそうな。これを見たさかな屋さんは、「おいしい身はここにおいて、貝がらだけもってかえったわい。こりやもうけもんをしたわい。」と、とてもよろこんだそうな。

それからは、つぎの日も、そのまたつぎの日も、吉吾どんはさかな屋にやってきて、アワビを三つ買っては、身はさかな屋において、貝がらだけをもってかえったそうな。
ところがな、そのまたつぎの日に、吉吾どんがやってきて、「きょうはな、ここにあるほどぜんぶアワビを買うなき(買うから)うんとまけちおくれ。」というたたそうな。

それをきいたさかな屋さんも、(これは、きょうはうんともうかるぞ。)と、心の中でよろこんだそうな。それで、「ああ、まけてあげるとも。はい、ぜんぶもっていっちょくれ。お代はそうじやな、二十文もあればよかろうで。」というて、アワビをぜんぶ、かごの中にいれたんと。ところが、きょうの吉吾どん、身のはいったまんまもってかえってしもうた。

おかげで、さかな屋にはひとつもアワビがなくなり、かごにいっぱいアワビをいれて、町の中を売りあるいた吉吾どん、大もうけをしたそうな。



金一貫

これは、中津の町の中で大きなきふをあつめたときのことじゃ。
町のせわ役の人は、さいしょに吉吾どんの家にいったそうな。ほしたら吉吾どん、奉賀帳(祝い金などの額をかきこむ帳面)に、くろぐろと「金一貫也」と、かきこんだそうな。
「これはありがたい。」せわ役たちはよろこんで、「そんなにたくさんきふしてくれるんなら、いま、証文をかきますで。」というたところが、「それよりも、まあ、ひとまわりまわってみてみない。」という。吉吾どんのことばに、せわ役たちは、金はあとからもらうことにして、さきに町の中をまわったそうな。すると、「吉吾どんがこれだけだしているなら、わしらもきばらにゃなるまい。」といって、どの家でもたくさんのきふをしてくれたんと。

わらいのとまらないせわ役たちが、いよいよ吉吾どんの家にやってくると、「はい、一貫。」といって、われなべや、やぶれがまなどの金物を、一貫目(約四キロ)ほどだしてきたそうな。
「こりやまた、吉吾どんにいっぱいくわされたわい。」せわ役たちはおこったものの、吉吾どんのとんちのおかげで、たくさんのきふがあつまったもんで、大よろこびしながらかえっていったんと。



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